アディダスの厚底ランニングシューズの頂点に君臨する「アディゼロプライムX3」。
公認レース規定の50mmを超える厚底と、カーボンの融合によって生まれるその“異次元の推進力”は、多くのランナーの憧れです。
しかし、その高価格と規格外のスペックゆえに、
- 「本当に速いのか?」
- 「自分に合うサイズは?」
- 「高価だけど耐久性は大丈夫?」
といった疑問や不安をお持ちではないでしょうか?
本記事では、筆者が実際に数十km走行した経験をもとに、プライムX3の驚異的な使用感、購入前に絶対に知っておきたいシビアなサイズ感、そして気になるアウトソールの耐久性を徹底的にレビューします。
アディゼロプライムX3の「異次元」のスペックを徹底解説

アディゼロプライムX3は、単なる厚底シューズではありません。
マラソン界の常識を覆すために開発された、規格外のテクノロジーが詰まった「異端児」です。
その最大のポイントは、世界陸上競技連盟(WA)の定めるレース規定(ミッドソールの厚さ40mmまで)を意図的に超えている点にあります。
この「自由」な設計こそが、他のシューズには真似できない推進力とクッショニングを生み出しているのです。
プライムX3とは?その革新的な立ち位置
プライムX3は、マラソンで公認記録を狙うためのシューズではなく
「スピード練習の質を極限まで高める」、あるいは「非公認レースで自己記録を更新する」ことを目的に設計されています。
- 異端のスペック: ヒール厚は驚異の50mm(前足部は43mm、ドロップは7mm)。
- ターゲット層: レースシューズの限界を超えた反発を体感したいランナー、ロング走の疲労を軽減したいシリアスランナー。
構造解析:アディゼロプライムX3を形作る3つの核
このシューズの推進力を支えているのは、贅沢に組み合わされた3つのコアテクノロジーです。
- ミッドソール:Lightstrike Proの圧倒的な量と反発
- プレート:ENERGYRODS 2.0(カーボン内蔵)とトッププレートの組み合わせ
- アッパーとアウトソール:サポートと信頼性
ミッドソール:Lightstrike Proの圧倒的な量と反発
プライムX3のミッドソールは、アディダス史上最も反発弾性が高く、軽量なクッショニング素材「Lightstrike Pro(ライトストライク プロ)」が3層構造で分厚くサンドされています。
この圧倒的な量が、着地時の衝撃を優しく吸収すると同時に、沈み込みから爆発的なエネルギーリターンを生み出し、「異次元のバネ」のようなライド感を提供します。
プレート:ENERGYRODS 2.0(カーボン内蔵)とトッププレートの組み合わせ
反発材だけでは実現できない強烈な推進力を生み出すのが、カーボン素材です。
- ENERGYRODS 2.0: 足の骨格構造を模したカーボンファイバー注入のバー(ロッド)が、足の自然な動きを妨げずに前への推進力をサポート。
- トップカーボンプレート: さらに、ミッドソールの最上部にはカーボンプレートが搭載されており、Lightstrike Proの反発を最大限に引き出し、爆発的な蹴り出しを可能にしています。
このカーボンとロッドのダブル構造が、まさに「公道では禁止された飛び道具」とも言える推進力をランナーにもたらします。
アッパーとアウトソール:サポートと信頼性
- STRUNGアッパー: プライムX3(STRUNGモデル)のアッパーは、アスリートのデータに基づいて緻密に糸の張り具合を調整して編まれたSTRUNGアッパーを採用。軽量でありながら、超厚底をしっかり支える高強度のサポート力と的確なフィット感を両立させています。
- アウトソール:Continental™ラバー:自動車のタイヤにも使われる高品質なContinental™(コンチネンタル)ラバーを、重要な接地部分に配置。強力なグリップ力は、爆発的な推進力を路面に確実に伝える上で欠かせません。この高い耐久性も、高価な本シューズの魅力の一つです。
この「速さ」のために一切の妥協を排したスペックこそが、プライムX3を唯一無二の存在にしているのです。
アディゼロプライムX3のサイズ感とフィット感を深掘り
高価なランニングシューズの購入で一番避けたいのが「サイズ選びの失敗」です。
ましてやプライムX3は厚底構造ゆえに、サイズが合わないと安定性が著しく低下し、シューズの持つ推進力を活かせません。
結論から申し上げますと、プライムX3のサイズは、多くのアディダス製品と同様、「やや小さめ」であると筆者は感じました。
サイズは「やや小さめ」。0.5cmアップが推奨
筆者は普段、アディダス以外のランニングシューズ(他社カーボンプレートモデル含む)でも25.5cmを履くことがほとんどです。
しかし、プライムX3を試着した際、25.5cmではつま先がやや圧迫される感覚があり、ロング走での爪への負担を懸念しました。
- 普段のランシューサイズ:25.5cm
- プライムX3でのジャストフィットサイズ:26.0cm
このハーフサイズアップを推奨するのには、主に以下の2つの理由があります。
つま先周辺のタイトさ
プライムX3のアッパーは、軽量ながら強度の高い「STRUNGアッパー」を採用しており、一般的なニット素材ほどの伸縮性はありません。
特に横幅や甲の部分は、足馴染みが良くなるまでに時間がかかるため、初期段階でタイトすぎると走行中に足が締め付けられる感覚が残る可能性があります。
厚底シューズ特有のホールド感の重要性
ミッドソールが50mmと分厚いため、ランナーは高い位置から着地することになります。
この高さを安定させるには、足とシューズの一体感が非常に重要です。
サイズが小さすぎると「窮屈」に、逆に大きすぎると「ぐらつき」に直結します。0.5cmアップで適度な余裕を持たせつつ、シューレースでしっかり締め上げることで、厚底をコントロールするための強固なホールド感が実現しました。
アディゼロプライムX3の「使用感」レビュー
アディゼロプライムX3を履いてまず感じるのは、その見た目の豪快さとは裏腹な、軽快な足運びです。
そして、一度走り出せば、他のシューズでは決して味わえない、重力に逆らうかのような強烈な推進力がランナーを包み込みます。
このシューズは、「どれだけ速く走れるか」だけでなく、「どれだけ楽に走れるか」という点において、ゲームチェンジャーとなり得ます。
【推進力】異次元のライド感は本当か?
プライムX3の推進力は、速度域によってその恩恵の感じ方が劇的に変化します。
ジョグ・イージーラン(ペース 5:30/km〜)
- 感触: 50mmの厚底Lightstrike Proが、非常に柔らかく足を受け止めます。
- 評価: 弾む感覚よりも、まず「衝撃吸収性の高さ」を強く感じます。着地時に足への負担が極めて少ないため、翌日に疲れを残したくないリカバリーランや、長い距離を楽に走りたいロングスローディスタンス(LSD)に最適です。ただし、ミッドソールが厚いため、やや接地感が曖昧になり、スピードの乗せ始めに重さを感じることはあります。
テンポ走・マラソンペース
- 感触: このペース域こそが、プライムX3の真骨頂です。
- 評価: スピードが上がるにつれ、Lightstrike Proの沈み込みが深くなり、内蔵されたENERGYRODS 2.0とトッププレートの反発力がシンクロします。まさに、「足が勝手に前に押し出される」という表現がぴったり。ロッドがテコのように作用し、脚力を最小限に抑えながらグングンと前に進む感覚は、一度体験すると病みつきになります。マラソンペースでの走行を圧倒的に楽にしてくれるため、特にフルマラソン後半の粘りに繋がると感じました。
インターバル・全力走(ペース 3:30/km〜)
- 感触: カーボンプレートの剛性が前面に出てきます。
- 評価: 超高速域でもクッションが潰れすぎることはなく、Lightstrike Proの復元力とプレートの硬さが協調し、パワフルな蹴り出しをサポートします。ただし、スピード重視の薄型レースシューズのような「ダイレクトな接地感」は薄れるため、地面を掴むような走りを好むランナーには、やや違和感があるかもしれません。それでも、疲労の蓄積を抑えながら高負荷の練習をこなせる点は、大きなメリットです。
【安定性】厚底50mmの懸念点
プライムX3を語る上で避けて通れないのが、「安定性」の問題です。
ヒール高50mmという規格外の厚さは、理論上ぐらつきを生みやすいはずです。
- 構造的対策: アディダスは、ミッドソールの接地面積を広く取ることで、ぐらつきを抑制しています。土台が広いため、直線での安定性は見た目以上に高いです。
- 懸念点: やはりカーブ(コーナー)と悪路では注意が必要です。特に急なカーブでは、高い位置にある重心が外側に振られやすく、意識的に体幹でバランスを取る必要があります。また、砂利道や傾斜の強い路面では、接地感が薄い分、足首をひねらないよう慎重な走り方が求められます。
【着地感覚】接地から蹴り出しまでの流れ
プライムX3は、特定の着地パターンに偏らず、多くのランナーに恩恵をもたらす設計です。
- ミッドフット・フォアフットストライク: Lightstrike ProとENERGYRODSが最も機能する層で着地するため、沈み込みと反発のサイクルを最大限に享受できます。特に前足部で捉えるランナーは、プレートによる強力なテコ作用を感じやすいでしょう。
- ヒールストライク: 分厚いヒールが着地の衝撃を完全にシャットアウトします。ヒールから入ってもすぐに前足部にかけての強力な反発層に移行するため、スムーズなローリングが可能です。
総じて、プライムX3は「走る楽しさ」と「練習の効率」を劇的に高めてくれるシューズです。
高価だから気になる!アディゼロプライムX3の耐久性を検証
プライムX3は練習用として長く使い続けたいシューズです。
価格に見合う耐久性があるのかどうかを、「アウトソール」「ミッドソール」「アッパー」の3つの観点から評価します。
アウトソールの摩耗具合:Continental™ラバーの信頼性
ランニングシューズで最も早く消耗するのがアウトソールです。
プライムX3は、耐摩耗性に定評のあるContinental™(コンチネンタル)ラバーを主要な接地部分に採用しています。
筆者の100km走行時点での検証
筆者が100km程度走行した時点では、アウトソール全体を通して摩耗は極めて少ないと感じました。
- 削れやすい部分: 一般的に摩耗しやすいとされる、かかとの外側(ヒールストライカーの場合)や、フォアフットの蹴り出し部分に多少の表面的な削れは見られましたが、ゴムのパターン(溝)が消えるような深刻なダメージはありませんでした。
- Continental™の恩恵: 非常に粘り強く、グリップ力に優れているため、多少の悪路でも安心して踏み込める信頼感があります。この耐久性の高さは、高価なシューズを長く履くための最大の安心材料です。
結論として、一般的なシューズが100kmで目に見える摩耗を見せるのに対し、プライムX3はContinental™ラバーのおかげで、アウトソール寿命は比較的長いと判断できます。
ミッドソールのヘタリは?Lightstrike Proの持続性
ミッドソールの耐久性は、このシューズの反発力がいつまで持続するかに直結します。
Lightstrike Proの耐久性評価
Lightstrike Proは、一般的なEVAフォームと比較して耐久性が高い素材です。
- 高弾性によるメリット: 反発弾性が高いため、一度の着地でフォームが潰れてしまう度合いが低く、衝撃からの復元力が持続しやすい特性があります。
- 筆者の体感: 100km走行後も、初期の爆発的な反発力は維持されており、ヘタリを感じることはありませんでした。この感覚は、他の高反発フォームと比較しても優秀だと感じています。
プライムX3はレース専用シューズではなく、練習での使用も想定されているため、一般的なカーボンシューズの寿命(200~400km)よりも長く、400km〜600km程度は高いパフォーマンスを維持できる可能性があります。
ミッドソールのヘタリを感じるサインとしては、「初期にあった強いバネ感が薄れる」「着地が硬く感じるようになる」などが挙げられます。
アッパー・シューレースなどの耐久性
アッパー素材「STRUNG」の評価
- 高強度: STRUNGアッパーは、一般的なメッシュよりも高強度で設計されており、走行中の破れやほつれに対する懸念はほとんどありません。
- 安定性の維持: 厚底シューズで最も重要な「足をソールの上に固定する力」が、耐久性が高いアッパーによって長く維持されます。
プライムX3は高価ですが、Continental™ラバーと耐久性の高いLightstrike Proフォームの組み合わせにより、練習用シューズとしても十分な寿命が期待できます。
異次元の推進力を長く楽しむことができる、ランナーにとって価値のある一足と言えるでしょう。
アディゼロプライムX3は「買い」か?総評とおすすめの活用法
アディゼロプライムX3は、筆者の経験から断言して「間違いなく買い」です。
ただし、「すべての人にとって」ではなく、その規格外のスペックを理解し、活用できるランナーにとっては、という条件が付きます。
プライムX3のメリット・デメリット総まとめ
| メリット(購入をおすすめする理由) | デメリット(購入時に注意すべき点) |
|---|---|
| 異次元の推進力:他のシューズでは得られない強力なバネ感。 | 価格が高い:高価であり、購入ハードルは高い。 |
| 疲労軽減効果:ロング走や高負荷練習後の疲労蓄積が少ない。 | 公認レースで使用不可:非公認の練習・イベント専用。 |
| 耐久性が高い:Lightstrike ProとContinental™ラバーで長持ち。 | サイズ選びがシビア:0.5cmアップ推奨など、試着が必須。 |
| 練習の質が向上:楽に速いペースを刻めるため、練習の自信に繋がる。 | 安定性に注意:カーブや悪路ではぐらつきやすい。 |
どんなランナーにおすすめできるか?
- サブ4〜サブ3レベルのランナーで、レースシューズの感触に慣れたい練習用シューズを探している方。
- ランニングエコノミー(燃費)を向上させたいと考えている方。
- 長距離練習による脚の疲労を本気で軽減したいと考えている方。
まとめ
アディゼロプライムX3は、ランニングギアの進化を感じさせる革新的なシューズです。
その異次元の推進力は、あなたのランニングの概念を変える可能性を秘めています。
購入を検討される際は、必ず本記事の「サイズ感のレビュー」を参考にし、可能であれば0.5cmアップのサイズを試着することをおすすめします。
この記事が、あなたの次のステップ、そして自己ベスト更新への一歩となれば幸いです。



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